「 会津嶺」2023年1月号・寄稿

 

「ウルトラマラソン」開催へのチャレンジ2

文:関家良一

 

昨年に続き今年も「会津柳津ウルトラマラソン試走会」に参加しました。

1周約1.3㎞のコースを12時間回り続けるという「周回走」です。

この試走会は将来正式な大会として開催するために、ウルトラマラソンの実績のあるランナーを集い、文字通りにコースを試走してもらおうという趣旨で昨年に開催され、本来今年は第1回の正式なレースが行われる予定でした。しかし懸案だったコロナ禍が長引き、目標としていた今年の春までに要項をまとめる事ができず、結果的に今年の開催は見送りという結論に至りました。

昨年は主に首都圏から9名のランナーが参加し、地元の方々を含む多くのサポートの下、夜間の12時間走にも関わらず全員が不眠で走り、歩き続け、6名が100㎞以上を走破し、練習会とは思えない高いパフォーマンスが得られました。

これは勿論それなりに実績のあるランナーが集まったという事もありますが、一番大きな要因は全体の雰囲気が大変良かったので、個々の能力が良い形で引き出された結果だと思います。それだけに今年の正式な大会開催に対するランナー達の期待も相当高かったのですが、こればかりは致し方のない事だと諦めざるを得ませんでした。

大会の発起人である「花ホテル滝のや」のご主人・塩田恵介さんから今年の大会開催断念の報せを受け、昨年の参加者や、昨年の様子を聞いて今年の大会には是非参加したいと語っていた走友たちに私からその事を伝えました。すると「良い雰囲気だった昨年の流れを断ち切る事なく、今年もう一回試走会をやろう」という意見が多く、その事を塩田さんに伝えると、「それならば」という事で快諾を得られたので、今回「第2回試走会」を開催する運びになったのです。

昨年は10月中旬の開催でしたが、今年はその月に2011年以降一部区間で不通となっていた只見線が11年ぶりに全面復旧するとあって、イベントその他で塩田さんはじめ地元の方々も忙しく身動きが取れないという事で、今回は11月最初の週末に行われる事になりました。

昨年同様、今回も私が呼びかけ人となってランナーを募ったのですが、昨年の実績から、今年はもう少し人数を増やしても良いのではないかと思い、最終的に16人のランナーが集まりました(うち昨年参加者7名)。勿論今回もウルトラマラソンの実績のあるランナーが揃いましたが、先述の通り昨年は主に首都圏からのランナー中心だったのが、今回一番遠くは愛知から。そのほかに最終的には所用の為に来られませんでしたが、鳥取や大阪からの参加申し込みもあり、全国規模の大会になる事を予感させるような広がり方を感じました。

 

試走会は115日午後5時に「道の駅会津柳津」の駐輪場を起点としてスタート。すでに辺りは薄暗くなっており、20分もすると携行ライトが手放せない暗さになりました。

降雨も無く風も弱く、走るにはまずまずのコンディションでしたが、昨年よりも3週間遅い開催のため寒さが身に凍みて感じられ、私自身は体の動きが悪くて前半から思うように距離が伸びませんでした。

昨年は途中雨が降る中でも102㎞走れたので今年もその程度を目標としていたのですが、4時間経過したくらいから歩きが入るようになり、残りは距離を気にせず楽しんで走る事だけを考えようと決めました。

しかし早い時間帯から歩きを交え、スピードに強弱を付けたお陰で一緒のペースになるランナーが多く、ほとんどのランナーと会話を交わしながら時間を共有できたのは幸いな事でした。

また昨年あった自動計測の機械が今年は無かったので、周回のカウントはエイドの皆さんが交代でチェックして下さったのですが、1周してエイドに戻ると「〇番通過しまーす」と身振り手振り、アイコンタクトで周回の確認を行ったので、ランナーとエイドスタッフとのコミュニケーションも活発で、昨年同様12時間のあいだ一度も眠くはなりませんでした。

周回走、殊に夜間走は景色の変化が無くつまらないという意見がありますが、この夜は晴れていて月が明るく星も綺麗で、流れ星も3回見られるなど天体ショーも満喫でき、たまに一人になる時間帯も飽きることがありませんでした。

 

結果、今回私は73周、93㎞を走る事ができました。

トップのランナーは97周、124㎞ですが、これを全面復旧した只見線に置き換えると、始発の会津若松駅から数えて31駅目の越後須原駅までの距離以上に相当します。私の距離だと27駅目の只見駅と、隣の大白川駅の間くらいまでですが、仮にこれが「只見線沿線マラソン」だったなら、このトップのランナーと私はスタート時に会えるのみで、12時間で31㎞もの「星空のディスタンス」ができてしまうわけです。しかし今回私はその彼女(総合トップは女性ランナーです)に24周抜かされました。つまり24回も接触する機会があったわけで、実際に彼女は私を抜いていく度に「お疲れ様」「ファイトー」と声を掛けてくれました。

考えてみると周回走の場合トップのランナーが一番人と接触する機会が多くなるわけで、それがまたエネルギーとなってより記録が伸びるという好循環に繋がっていくのかもしれません。

「練習会だから距離に拘らずに楽しんで走って下さい」とスタート前に参加ランナーの皆さんに挨拶したのですが、結局16人中11人が100㎞を超えるなど、今回もレベルの高い試走会となりました。

昨年同様、楽しんで走る事が記録にも結び付くという好例と言えるでしょう。

 

実際にレースを開催するにあたって、まだまだ検討すべき課題は多いと思います。しかし「素晴らしい大会の下で走れる事の喜び」を知っているランナー達の思いが届く事を信じ、来年の本大会開催に期待したいと思います。